「傾聴」はActive Listeningで同じ意味?|
英文履歴書・英語面接で起きる「言葉のズレ」

英文履歴書や英語面接では、 日本語の言葉を英語に置き換えただけでは、 本人が意図した意味と、 読み手や面接官が受け取る意味が ずれることがあります。

その一例が、 日本語の「傾聴」と 英語のactive listeningです。

「傾聴」はActive Listeningと同じ意味なのか

応募書類の作成や添削をしていると、 「傾聴」「傾聴力」を 自分の強みとして挙げる方は少なくありません。

日本語で 「傾聴を大切にしています」 と言えば、 相手の話を遮らず、 評価や反論を急がず、 まず十分に話してもらう姿勢を 思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。

これをそのまま英語にすると、 AIや機械翻訳では active listening という表現が使われることがあります。

Active listeningは、 単に「最後まで口を挟まず、黙ってよく聞く」 という意味だけではありません。

Active Listeningには、どんな行動が含まれるのか

英語のビジネスコミュニケーションで active listeningについて説明するときには、 相手の話を聞くだけでなく、 曖昧な点を質問して確認する、 相手の言葉を言い換えて理解を確かめる、 要点を整理する、 さらに話を掘り下げる、 といった行動まで含めて語られることがあります。

たとえば、こんなやり取りです。

“So what you’re saying is …”
「つまり、おっしゃっているのは……ということですね」

“If I understand correctly …”
「私の理解が正しければ……」

“What happened after that?”
「その後、どうなりましたか?」

“Do you mean X or Y?”
「Xという意味ですか、それともYですか?」

つまり、

聞く → 確認する → 言い換える → 質問する → 要約する → 認識を合わせる

聞き手も会話に積極的に関与し、 相手との理解をすり合わせながら 会話を前に進める力と考えると、 分かりやすいかもしれません。

「訳として正しい」と「同じ意味が伝わる」は別

そう考えると、 日本語で本人が「傾聴力」として 思い描いている行動と、 英語のactive listening skillsから 読み手が想像する行動は、 必ずしも一致しない可能性があります。

ここで、 日本語で一般的に考えられている 「傾聴」の方が劣っている、 と言いたいわけではありません。

相手の話を遮らず、 まず受け止める姿勢が 重要な仕事や場面もあります。

一方で、 質問や確認を重ねながら 会話を整理する力が必要なこともあります。

職種や役割、 その人自身の仕事観によっても違うでしょう。

では、Active Listeningと訳すのは間違いなのか

必ずしもそうではありません。

日本語の「傾聴」と active listeningには重なる部分もありますし、 文脈によっては自然な訳になります。

また、 本人自身が英語でいうactive listeningを 意図している場合もあります。

単語として訳せることと、 本人がその言葉で意味している行動まで 正確に伝わることは別です。

本人は 「相手の話を遮らず、まず受け止めること」を 傾聴と考えていても、 読み手はactive listeningから、 質問、確認、要約、言い換え、 掘り下げまで含む行動を 想像するかもしれません。

問題は、 「どちらが正しいか」ではありません。

本人がその言葉で何を意味しているのかと、 その言葉を読んだ相手が何を想像するのかが、 一致しているかどうかです。

「愚直」のように、背景の価値観まで変わる言葉もある

似たことを、 「愚直」という言葉にも感じます。

日本語で 「愚直に取り組む」と言うと、 粘り強く、 簡単に諦めず、 地道に最後までやり抜く姿勢を 想像する人は多いと思います。

誠実さやまじめさを含む、 肯定的な言葉として 捉えられることも多いでしょう。

ところが以前、 ネイティブライターと 応募書類の表現を検討した際、 それを英語でどのように表現するか話していたところ、 「それはあまりスマートではない」 という反応をされたことがありました。

もちろん、 「粘り強さが評価されない」 という意味ではありません。

ただ、 仕事によっては、 ひたすら努力を続けること以上に、 より効率的な方法を考える、 優先順位を変える、 仕組みそのものを改善する、 といった合理的で迅速な行動が 評価される場合もあります。

言葉そのものだけでなく、 その背景にある 「何を良い仕事と考えるか」という評価基準も関係します。

英文履歴書では「言葉」より「行動」を確認する

こうしたことを考えると、 英文履歴書でも英語面接でも、 普段何気なく使っている言葉を そのまま英語に置き換える前に、 一度立ち止まって考える必要があります。

まず考えてみたいこと
  • 私は、この言葉で相手に何を伝えたいのか
  • 相手には、どんな自分を理解してもらいたいのか

たとえば、 「傾聴力があります」 と英文履歴書に書くのであれば、 その人は実際に仕事の中で 何をしているのでしょうか。

  • 相手の話を最後まで聞く
  • 質問をして本音を引き出す
  • 話を整理して論点を確認する
  • 意見の違う相手でも、まず受け止めてから話し合う

そこまで具体化できれば、 必ずしも 「傾聴力=active listening」 という一語に頼る必要もなくなります。

これは英語だけの問題ではありません

実は、 これは英訳だけの問題ではありません。

日本語の履歴書でも、 面接で話す内容でも、 「自分では意味が分かっているから、 相手にも分かるだろう」 と無意識に思い込んでいることがあります。

ところが、 自分の経験について 別の角度から質問されると、

「そういえば、 なぜそうしたのだろう」

「なぜそれが成果につながったのだろう」

と、 初めて意識的に考えるようになることがあります。

応募書類や面接回答では、 文章を整えるだけでなく、 自分の経験について さまざまな角度から質問してもらうことにも 大きな意味があります。

なぜ、文章を整えるだけでは足りないと感じるようになったのか

ここ数年、 応募書類を作成・添削する中で、 少し気になっていたことがあります。

日本語の原稿をもとに 英文書類を作成する場合は、 文脈から判断したり、 ご本人の意図を確認しながら 進めることができます。

一方、 ご利用者自身が作成した英文を ネイティブライターが添削・編集する場合、 確認できる日本語原稿がないこともあります。

その英語は、 本人が本当に伝えたかったことを 正しく表しているだろうか。

ご本人の意図を正しく汲み取り、 それを損なわない形で 英文を整えられているだろうか。

そして、 書類としてきれいに整理された内容を、 ご本人自身が面接の場で、 質問の角度が変わっても ブレずに自分の言葉で 説明できているだろうか。

特に、 ビジネスでよく使われる 抽象的な表現や流行語を 応募書類で見かけるたびに、 こうしたことが気になるようになりました。

AIに答えを作らせるのではなく、自分の経験を理解する

こうした問題意識から、 現在、 ご利用者にも協力をお願いしながら、 AI面接コーチングサービスを開発しています。

目指しているのは、 AIに模範回答を作らせることではありません。

JD(応募要項)や職務経歴書をもとに AIがさまざまな角度から質問を重ねることで、

ご本人が自身の経験や考えを正確に理解し、 自分の言葉で説明できる状態をつくる。

それを目指しています。

開発の過程で、 私自身も面接候補者役として 質問に答えてみました。

すると、

「自分では分かっているつもりなのに、 日本語ですらうまく説明できない」

ということを、 私自身が実際に経験しました。

これについては、 次の記事で詳しく書いてみたいと思います。

英訳する前に、「何を伝えたいのか」を確認する

英文履歴書や英語面接では、 英単語として自然かどうかだけでなく、 その言葉から相手が どんな行動や人物像を想像するのか まで考える必要があります。

「傾聴」をactive listeningと訳すこと自体が 問題なのではありません。

大切なのは、 その言葉が、 本人が実際にしてきたことや 伝えたい人物像を 正しく表しているかどうかです。

文章をきれいに整える前に、 「自分は、本当は何を伝えたいのか」を具体的にする。

それが、 英文履歴書や面接で起きる 「言葉のズレ」を減らす 第一歩なのだと思います。

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